母乳で育てることは、乳児が病気になりにくく、健康を維持できるコストがほとんどかからないというメリットがありますが、先進国の多くでは、母乳で育てる人が少ないのが実情です。
女性が、もっとも心配することの1つに、子どもを母乳して育てたら、胸の外観が崩れることで、乳房が魅力的でなくなると考えられています。
最近の高校生のアンケートによると、30%の男女が、授乳することで胸が醜くなり、授乳しないことで、これらの問題が避けられると考えています。
この都市伝説的なトピックは、本当なのでしょうか?
胸の外観が授乳の有無で変化するのかを調べたイタリアの臨床研究を紹介します。
出産後の乳房の変化
496人の女性に最初の出産後から18カ月内にインタビューしました。収集した情報は、授乳の有無、および妊娠前のブラジャーのカップサイズ。
出産後の情報は、インタビューの時点で乳房の外観(乳房のサイズの拡大または縮小、張りの低下)の変化、ブラジャーのサイズ(自己申告)の変化でした。
母親の73%が、妊娠前と比較して乳房が異なっていると報告しています。
最も一般的な変化
- 胸の弾力性の低下164人 (33%)
- 胸の大きさの変化135人(27%)
- 両方とも63人 (13%)
授乳の有無での乳房の変化
授乳したと母親と授乳しなかった母親の変化率はそれぞれ75%と69%であった(相対リスクは1.09,95% CI:0.96-1.23)。妊娠前のブラジャーカップサイズは、授乳の頻度や乳房の外観の変化との関連性はありませんでした。
この医学論文は、「出産後の授乳の有無による胸の外観の変化」を調査した最初の研究です。最も顕著な発見は、授乳した胸と授乳しない胸の両方の女性のほとんどが、自分の胸は、妊娠前と比較して異なったと報告されたことです。
さらに、授乳して育てた女性は、授乳していない女性に比べて、胸の大きな変化はそれほどなかったことです。本研究の限界の1つは、これらの結果が母親の主観的なレポートだけで評価している点です。
実際には、胸の外観の変化に対する概念は、各女性によって異なります。また、大きいブラのカップサイズが胸の大きさに関連していないこともあります。
出産後に太ったため、胸囲の増加したために、快適さを求めるために大きいブラを装着するひともいます。胸の変化に対する心配は、胸のサイズと形状を客観的評価されていませんが、女性が胸の外観の変化の認識を受け入れる結果で評価されています。
妊娠中には、乳腺組織に大きな変化が起こります。その結果、授乳期間にもよるのでしょうが、胸の外観に変化を来します。この論文では、出産回数は述べられていませんが、出産回数が増えれば、少なからず変化は大きいものなるでしょう。
また、この胸が変化してしまったという思いは、妊娠後、授乳していない女性に対しても長い期間続くとされます。
胸の外観の変化は、出産後によく見られ、妊娠との関連性はあるものの、授乳の有無は、胸が変化する点ではあまり影響がないという結果でした。
・ポイント
出産後の乳房の変化はあるものの、授乳の有無ではそれほどの変化はない
Breastfeeding and perceived changes in the appearance of the breasts: a retrospective study.
Acta Paediatr. 2004 Oct;93(10):1346-8.